ブラジルという国

ブラジルのコーヒー

ブラジルのコーヒーは、長年に渡って世界最大のコーヒー生産国であり続けている。現在、ブラジルは世界総生産量の1/3のコーヒーを生産しているが、その昔には市場で80%ものシェアを占めていた時期もあったようです。

ブラジルコーヒーの歴史

ブラジルにコーヒーが伝わったのは、1727年にフランス領ギアナから伝わったと言われています。当時ブラジルはポルトガルの植民地にありました。ギアナ領土を巡ってスペイン・フランス・オランダが入れ替わり占領するようになり、ブラジルとの境界線が曖昧になっていたため、境界線の解決に向け派遣されたのがフランシスコ・デ・メロ・パリエッタでした。

パリエッタは、かなりのイケメンで女性からは注目の的で、ギアナ総督夫人もすっかり虜にされてしまいました。何度も晩餐会に招かれ、人間性にも惹かれてしまい恋をしてしまいます。晩餐会でコーヒーを飲んだパリエッタは、その美味しさに大喜びだったようです。

実はパリエッタにはもう一つ任務が言い渡されていました。それは、コーヒーの種子を持ち帰ることでした。当時コーヒーは、「金のなる木」と言われていてコーヒー生産国はコーヒー種子の持ち出しを禁じている国がほとんどでした。そのことをパリエッタは、総督夫人に話しました。

その後、境界線も合意に至り帰国の際に彼女から大きな花束を受け取り、その中にはコーヒー種子とコーヒー苗が入っていました。彼女は耳元で「コーヒーを召し上がってください。」と囁いて別れて行ったそうです。帰国後に彼が北部にある現在のパラー州に植えたことに始まり、後に南部へと伝わり商業化されるようになって行きました。

コーヒーと奴隷制度

コーヒーの商業生産にとって、切っても切り離せないのが奴隷制度です。ブラジルでは、大量の奴隷を労働力に生産量を大きく拡大していくことになります。他国では奴隷制は行っておらず、ブラジルのコーヒー生産の特徴です。多くの奴隷がブラジルに連れて来られ、コーヒー農園で働かされました。その数150万人余りとも言われています。

しかし1850年、英国がブラジルに対してアフリカでの奴隷取引を禁止することになり、移民や国内の奴隷取引に移行して労働力を確保するようになります。1888年に奴隷制度廃止となり、労働力不足で生産量が落ちるのではないか?と危惧されましたが、心配をよそに順調に生産されたようです。

その後も生産量は増えていき、1920年代には世界のコーヒー生産量の80%を占めるまで拡大していきました。しかし、衰え知らずの生産量が過剰供給を招き価格が暴落することとなり、生産者は大打撃を受けてしまいました。

かつては消費国の立場が強く、買いたたかれることも日常茶飯事で大量に生産しても収入が少なく生活していくことが困難な状況にまで追い込まれる農家も少なくない状況でした。 生活を守る為、コーヒー農家から違う作物を育てる農家に方向転換する農家や、コーヒー農家を辞めて違う仕事に就くなど様々な事情により生産量はかつての勢いは衰えて行くことになります。

フェアトレードの導入

この状況は、ブラジルだけに留まらず世界的にこのような状況でした。コーヒー生産者が減ってしまうと、いずれ世界のコーヒー生産量が減ってしまい価格が高騰してしまうことになる。消費国にとっても都合が悪くなってしまい誰に取っても良くない状況になってしまうと危惧されはじめました。その打開策として考えられたのが、対等な立場で取引ができる仕組み作りでした。(フェアトレード)

フェアトレードの導入によって、生産者の収入は改善しコーヒー農家として存続できる農家も増え安定供給できるようになります。コーヒー農家にとって重要なのは収入が安定し、そして希望があり若い世代がコーヒー農家として働きたいと思ってくれることが大切です。その為に、スペシャルティコーヒーと言う枠組みを作るようになります。

コーヒーの評価基準の見直し

今までのコーヒーの評価は、標高・豆の大きさ・欠点豆の混入率などでした。味での評価はありませんでした。どんなに美味しいものを生産しても価格への評価はなく、クラシフィカドール(ブラジルのコーヒー鑑定士)によってクライアントの要望どうりの価格や味になるように混ぜられていました。

それではモチベーションや品質も上がりません。今までの評価以外に、味覚・嗅覚などの評価を付けることでモチベーションや品質向上を図ったのです。「美味しいコーヒーを作ってくれれば、高く買いますよ。」という枠組みを作ったことで、世界中のコーヒー生産者がやる気を起こし、品質・価格も上がりました。生産者たちも、やったらやっただけ評価してくれる枠組みが出来たことでやりがいが生まれ収入も上がるようになります。

国によっては、まだスペシャルティコーヒーの概念がないところもあり、生産者もスペシャルティコーヒーを理解できずにいるところもあるようです。それは、国の方針だったり、規制であったり、情報不足であったり国によって事情は異なるのでしょう。

今の高品質なコーヒーはいつまで飲めるかな~?

ブラジルは過去に、さび病が蔓延したり、霜害に見舞われたり、凶作が続いたり、その度にコーヒー価格が高騰するようなことが度々ありました。

2050年には、今のコーヒーは飲めなくなるとの予測も出ています。現在、気候変動の影響で既に、生産量が減っている国も出てきています。それは、ブラジルも例外ではありません。色々品種改良もされてはいますが、今の高品質のコーヒーを飲めなくなるのは時間の問題かも知れません。

コーヒー大量生産国のブラジルが減産するようだと、その影響力は計り知れません。更なる価格高騰は、避けられません。2050年に急に飲めなくなる訳ではなく、徐々に生産量が減り更に価格が高騰してしまい、とても貴重な飲み物になって行く可能性があります。なので飲めるうちに、高品質なコーヒーを飲んで楽しんでおきましょう。

ブラジルの代表的な生産地域

多様なコーヒーの味わいや香りを生み出す様々な生産地があります。コーヒー生産地域では、標高、気候、土壌、品種、精製、乾燥など色々な条件により、コーヒーの味わいや香りに影響を与えます。

サンパウロ州

サンパウロ州は、ブラジルの南東部に位置し、ブラジル有数のコーヒー栽培地域モジアナがあります。

ミナスジェライス州

ミナスジェライス州は、ブラジルの南東部に位置する州で、ブラジル最大収穫量を誇るコーヒー生産地です。高品質なコーヒーも沢山栽培されています。

バイーア州

バイーア州は、ブラジルの東部に位置する広大な州で、近年この地域から素晴らしい高品質なコーヒーが次々と登場して注目を集めています。

パラナ州

パラナ州は、ブラジルの南部に位置する州で、その昔には最大収穫量を誇っていたが、1975年の霜害の影響で他の作物に方向転換した農家が多く、国内最大収穫量の座をミナスジェライス州に渡すことになる。

ロンドニア州

ロンドニア州は、ブラジルの中西部に位置する州で、ブラジルのロブスタ種の栽培地の一つです。ブラジルでは、ロブスタ種は通常「コニロン」と呼ばれています。

エスピリトサント州

エスピリトサント州は、ブラジルの南東部に位置する小さな州で、生産量が2番目に多い州です。栽培の80%近くはコニロン(ロブスタ種)です。

これらの生産地域で生産されるコーヒーには、同じ地域でも生産者によって異なる風味を持つこともあります。また、生産地域以外にも、品種や精製方法、焙煎方法などがコーヒーの味わいや香りに影響を与えるため、同じ生産地域でも多様なコーヒーが存在します。

ブラジルで栽培されているアラビカ種の代表的な品種

ブルボン種

ブルボン種はティピカ種(最も古い栽培品種)が、マダガスカル島の東にあるブルボン島(現レユニオン島)で突然変異して生まれた品種。完熟実の色は、赤・黄・オレンジ色などある。以前は幅広く栽培されていたが、多くの生産国でより生産性の高い品種に変えられてしまった。ブラジルで栽培されているブルボン種は、酸味が穏やかで、コクがあり、チョコレートのような風味や甘味が特徴です。また、ブラジルの気候条件に適応しやすいため、生産量が多い品種の1つです。

ムンド・ノーボ種

ムンド・ノーボ種は、ティピカ種とブルボン種の自然交配で、1940年に発見されたブラジルの地名に由来する。病気に強く、生産性が高く・耐久性がある品種。ブラジルの土地との相性が良いのかよく育つ。

カトゥーラ種

カトゥーラ種は、1937年にブラジルで発見されたブルボンの突然変異種で比較的生産性が高い。樹があまり高く成長せず、手済み収穫し易く人気のある品種。特に中南米で人気のある品種だが、ブラジルでも栽培されている。完熟実は赤色と黄色がある。

カトゥアイ種

カトゥアイ種は1950年~1960年代に、ブラジルのカンピーナス農業試験場が開発した、カトゥーラ種とムンド・ノーボ種の交配種。樹があまり高く成長せず、生産性や耐久性を兼ね備えた品種。完熟実は赤色と黄色がある。

ブラジルの主な精製方法

ナチュラル(自然乾燥式)

ナチュラルは、収穫されたコーヒーの実をそのまま天日乾燥させコーヒーの豆を取り出す精製方法。ブラジルのような広大な敷地面積で平地が多い農家は、パティオ(中庭)に広げて乾燥させたり、平地の少ない農家では高床式の棚で乾燥させたりする。乾燥が終わると、パーチメントの状態で貯蔵庫で1か月~2か月熟成させたのち、脱殻機でパーチメント(内果皮)を取り除く。グリーン色のコーヒー生豆を色やサイズ別に選別・欠点豆の除去を行い、袋詰めして出荷していく。風味が強くコーヒー本来の味わいや比較的甘味が強い傾向にあるのがメリットである一方、未成熟豆や発酵豆などの欠点豆の混入が多くなる傾向があるデメリットもある。

ウォッシュド(水洗式)

ウォッシュドは、収穫した実を水の中に入れて沈んでいる実のみを使用する。水に浮いている実は、未成熟のため使用しない。ここで欠点豆を取り除く工程になる。沈んだ実は、パルパーと言う機械で皮と果肉を取り除く。取り除いた種は、パーチメント(内果皮)とその周りにぬめり(ミューシレージ)がある。ミューシレージを完全に取り除く必要があるので、水を張った発酵槽の中に入れて発酵させて取り除きます。その後ミューシレージを取り除いたパーチメントを良く水で洗浄し、ナチュラルと同じように天日乾燥させます。生産者によっては、機械で乾燥させる場合もあるが天日乾燥に比べると品質が劣ると言われています。 乾燥が終わると、パーチメントの状態で貯蔵庫で1か月~2か月熟成させたのち、脱殻機でパーチメント(内果皮)を取り除く。グリーン色のコーヒー生豆を色やサイズ別に選別・欠点豆の除去を行い、袋詰めして出荷していく。 ナチュラルほど風味は強くないが、味わいはクリーンで酸味は強くなる傾向にある。ただし、欠点豆の混入率が低いので品質は上がる。

パルプド・ナチュラル

パルプド・ナチュラルは、主にブラジルで行われている精製方法で、途中まではウォッシュドと一緒です。収穫した実を水の中に入れて、沈んだ実のみを使用します。沈んだ実は、パルパーで皮と果肉を取り除く。ミューシレージ付きのパーチメントをナチュラルと同じように天日乾燥させます。 乾燥が終わると、パーチメントの状態で貯蔵庫で1か月~2か月熟成させたのち、脱殻機でパーチメント(内果皮)を取り除く。グリーン色のコーヒー生豆を色やサイズ別に選別・欠点豆の除去を行い、袋詰めして出荷していく。 ウォッシュドより水を節約でき風味を良くする狙いがあったようです。ミューシレージには糖分が多く含まれており、甘味・コクの強いコーヒーになる傾向があります。

ブラジルコーヒーの味わい

ブラジルの高品質なコーヒーの代表的な味わいは、「チョクレートやナッツ系のフレーバーが伴い、酸味が穏やかでボディが重く甘味が強い。」傾向にあります。

イエロー系の品種では、とてもフルーティーな香りが印象的で甘く重厚なコクがあるように感じます。イエローピーチやマンゴーのような華やかなフレーバーを感じる物もあります。もちろんイエロー系ならこのように華やかなフレーバーに成るとも限らず、気温・日照条件・土壌など様々な環境の影響や精製方法などによっても変わってきます。おいしいコーヒーを作りたいと思う生産者の努力のたまものが、このような高品質なコーヒーを生み出すことが出来るのでしょう。